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学会長挨拶

齋藤 圭介(さいとう けいすけ) 第35回中国ブロック理学療法士学会 学会長
吉備国際大学

 このたび、第35回中国ブロック理学療法士学会を2022年9月3日(土)~4日(日)の2日間、岡山よりオンライン学会として開催する運びとなりました。

 本学会は中国地区5県の理学療法士が集い、最新の学術的知見や臨床実践、教育、社会貢献活動の動向を知る貴重な機会として発展してきました。COVID-19による世界的なパンデミックの中、延期されつつも幾多の困難を乗り越え開催された第34回島根学会を引き継ぎ、中国ブロックの学術活動を着実に前進させて参りたいと思います。

 我が国の理学療法士は、有資格者累計で約20万人を数えるコメディカルの中でも有数の規模を誇る職種へと成長し、近年では急速に多様化(Diversity)が進んでいます。病院を主な活躍の舞台としていた理学療法は、超高齢社会の進展を背景に地域へと広がりを示し、地域包括ケアシステムの構築・推進が図られています。介護予防・健康増進分野での活躍はめざましく、近年では労働衛生や生活習慣病予防などMultiple Preventionの視座に立った予防分野の拡大が図られ、起業・独立する方も増えています。また災害支援活動やアジア諸国を中心とした海外展開が取り組まれる等、誕生から50年以上を経て、誰もが想定できなかった程に多岐に渡る発展を示しています。こうした状況は、理学療法が専門性を生かし人と社会のニーズに柔軟に対応してきた成果である一方、医療専門職として個別的リハビリテーションを中心に展開してきた理学療法のパラダイムシフトを求めるものと考えます。

 今回の学会では、メインテーマを「Diversity and Integration ~理学療法の新たなる可能性への挑戦~」としました。理学療法は、多様化する職域と新たに遭遇する様々な課題に対し、培ってきた知識と技術、科学的根拠や理論を統合(Integration)するスキルチェンジが求められている状況といえるでしょう。多様化が進む理学療法の現状を知ると共に、取り組むべき課題や新たな発展可能性を探り、複雑かつ混沌とした社会情勢の中でもポジティブに挑んでいきたいという願いを込めて、このたびの学会テーマを掲げました。

 このメインテーマの下に、学会企画はバラエティに富む充実した内容で構成しました。特別講演では、市橋則明先生(京都大学)に、身体運動学の最新知見と理学療法への応用についてご講演頂きます。職域の多様化と新たな課題に対峙する上で、我々の専門性を裏打ちする知識と技術を見つめ直す機会になればと考えます。もう一つの特別講演では、市民公開講座として中尾篤典先生(岡山大学学術研究院医歯薬学域 救命救急・災害医学講座)に、超高齢多死社会の急速な進展を見据え、人生の最終段階における医療で確立が求められているアドバンス・ケア・プランニング(ACP)についてご講演頂きます。
 教育講演では、藤本修平先生(静岡社会健康医学大学院大学)に、個人の価値観の多様性を保証し、エビデンスに基づく対象者中心の理学療法を展開するヘルスコミュニケーションとして、対象者と共に治療方針を決定する共有意思決定(SDM)についてご講演頂きます。
 管理・教育シンポジウムでは、これからを見据えた理学療法の質保証の重要性や、コロナ禍で臨床実習教育が著しく制限されている状況を踏まえ、新たな卒前教育・卒後教育のあり方について一緒に考える機会にしたいと思います。特別企画では、起業や一般企業に勤務されている先生方に取り組みをご紹介頂きます。
 特別フォーラムでは、脳血管疾患・運動器疾患で会場を分けて事例検討を行います。具体的には、症例情報を基に2名の講師より病態分析・予後予測・治療プログラムを提示いただき全体討議を行う、実践的かつ臨床思考過程を共有するチャレンジングな内容で計画しています。

 2021年度に日本理学療法学会連合が誕生し、分科学会は法人化されサイエンスとしての深化が期待されています。それに対しブロック学会は、各専門分野の最新知見や先進的実践を横断的に知ることが出来る身近な学会として、果たすべき役割はますます大きくなるものと思います。新たな課題に対峙するには学際的アプローチが不可欠です。学際的な学会だからこそ出来る、これからの理学療法の可能性を探る貴重な機会になればと考えています。

 多くの皆様のご参加と演題エントリーを、学会関係者一同心からお待ちしております。